多店舗経営では、大きな組織をまわす必要がありますので、幹部の役割はとても重要です。
※幹部:会社の規模によって異なりますが、ここでは店長~役員クラスまでを指します
近年、経営TOPから「この厳しい時代を乗り切るためには、幹部社員にもっと自律した動きをして欲しい」という声が確実に増えています。
その背景には、
1)コロナ禍を経て変わってしまった経営環境に対して、新しいことに挑戦しなければいけない
2)トップダウンで成長してきたが、そのかわりにイエスマンが増えてしまった
3)次の経営TOPへの事業承継を円滑に果たすためには、次世代の経営幹部を育てる必要がある
など、会社によって様々なものが影響しています。
今回は、この不透明な経営環境をきりもみする幹部を、どのように育てていくかについて考えてみましょう。
◆自ら考える幹部にするためには◆
1.会社の節目のゴールを設定する
会社の節目とは、例えば2030年度(5年後)、2035年度(10年後)などの年度の節目であったり、創業●●周年などの会社の歴史上の節目であったり、従業員にとって分かりやすい節目のことです。
大事なことは、この節目に達成していたい具体的なゴールを設定することです。ゴールを設定することによって、全従業員が同じゴールをイメージすることができ、会社に一体感とやる気をもたらします。
更に大事なことは、そのゴールを達成させるための具体的な戦略や実行計画などを幹部に考えてもらうということが大切です。
2.責任と権限を本気で与える
幹部に自律して欲しいのであれば、幹部が考えて、判断して決めて、実行して結果に責任を持つ、ということを実現させなければいけません。
もちろん経営TOPへの相談は構いませんが、あくまでも幹部が与えられた権限を使って、自分の責任で結果を出すことにしなければ、いつまでも自主性は伸びてきません。
とかく心配であったり、自分のやり方と違うことが理由で、経営TOPが細かいことにまで口を出してしまうということをよく耳にしますが、これでは責任と権限を与えたことにはなりませんね。
3.現場(店舗スタッフ)との対話の場を持つ
現場と経営TOPが対話できる場を継続的に設けるようにします。ここでの最初のポイントは、現場の問題を経営TOPが直接確認するということです。
現場で起きていることを経営TOPが直接聞いたり、経営TOPとしての想いを直接話したりすることは、会社の一体感を持たせるためにはとても大切なことです。
更に大事なことは、そこに幹部を同席させることです。幹部は現場の課題について経営TOPとも共通認識が持てるので、その課題の解決策を幹部に考えてもらうことで、自分事として課題をとらえることができるようになります。
ここでは「あなたならどうする?」と幹部に投げかけることが大事です。
4.3年先のテーマを話し合う
役職が上がれば上がるほど、会社の未来について考える時間を増やす必要があります。
忙しい幹部はとかく目先のことに気を取られてしまいがちです。その結果、日々のオペレーションの実行に時間のほとんどを使っているという状態になってしまいます。
緊急度―重要度のマトリックスのタイムマネジメントで言いますと、緊急度(低)―重要度(高)のマネジメント事項について、より多くの時間を使ってもらい、その内容について経営TOPと話し合う機会を持つことが大切です。
5.判断・行動の根拠を訊く
幹部が判断したことや行動したことには、理由があるはずですので、何故そのようにしたのかを訊くようにします。
もしその理由を分かりやすく説明できないのであれば、そのことは幹部の部下には正しく伝わらないですし、現場のモチベーションの低下にも結びつきかねません。
ヒトは「何故それをやるのか?」が分からないまま仕事をしていますと、仕事を単なる作業としてやることになってしまいます。本来は作業という仕事はないはずですので、気をつけたいですね。